王子、月が綺麗ですね
厳かな朱塗りの鳥居が光沢を放っているのが見えると、緊張感は更に増した。

わたしの手は汗ばんで、何度も預かっている松葉杖を握り直した。

鳥居を潜り抜け、王子は紅蓮殿の背中から降り、朱雀の社の前に立った。

胸の前で大きく六芒星の印を結び、呪を唱えて社の結界を解くと、扉が待ち構えていたようにスッ開いた。

煌々と輝く朱雀の姿は眩しくて、社の中はまるでサウナみたいに熱かった。

「──やはりな」

王子は冷静に朱雀を見つめて呟いた。

「これでは身を焼き復活する事もできぬな」

朱雀は社の中央で翼を広げ火の粉を撒き散らし、鳴き声を上げもがいている。

両足を頑丈な枷で固定され、鎖でつながれたその先には黒い鉄球が着いていた。

王子は朱雀の巣にサッと手を入れた。

明々と燃える炎が王子の腕をあっという間に飲みこんだ。
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