王子、月が綺麗ですね
「えっ!?」

「朱雀が縛られた鎖、あれには呪詛がかけれていたんだよ。呪詛を解除した時、穢れを取り込んだんだろうよ」

瑞樹さまの説明に、言葉が出なかった。

「あの子の中の龍神の力で穢れを相殺しているんだろう。ったく無茶をするよ」

「大丈夫なんですか?」

「あの子の陰陽術は姉上も認めるところさ。熱は明朝には下がっているはずさ。……ただ不安要素は朔が近いことだね」

朔の日、王子が龍神を御身に宿し力を使い、謀反を鎮めた直後に意識を失い、丸2日も目覚めなかったことが頭を過ぎった。

「晦日、朔は移動は無理だろうね。いずれにしても八咫烏からの報告が気になるね」

「いったい誰が朱雀に呪詛なんて……」

「さっきの男といい、朱雀といい──足止めさせようという魂胆が見え見えだね。風早の差し金と視るのが妥当だろうね」
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