王子、月が綺麗ですね
「葵くん、少し休んでいこうか」

紅蓮殿が王子を振り返り、王子の側に駆け寄ったかと思うと、王子の足に触れ状態を確かめた。

「ずいぶん我慢を──」と眉をしかめ、王子を両腕にサッと抱きかかえた。

木造建の市場の中は、野菜、魚、肉の他にお惣菜や工芸品などもあり、こじんまりした食堂もあった。

紅蓮殿は王子を食堂の椅子に座らせ、足のマッサージを始められた。

瑞樹さまとわたしと祥は5人分の昼食を注文し、テーブルに運んだ。

「どうだい、足の具合は?」

「かなり張っていますね。これ以上歩くのはちょっと」

「……すまぬな」

「早くお食事食べないと、祥に全部食べられちゃいますよ」

祥は王子たちが話をしている間に、テーブルに並んだお皿を片っ端からぶっしょくしていて、すごい勢いで食べていた。
< 157 / 174 >

この作品をシェア

pagetop