王子、月が綺麗ですね
「勾玉は肌身離さず身に着けておかれるように」

「これか」

俺は胸元に下げたペンダントをパジャマから引き出し、手に取る。

闇の中で眩く光りを放っていた勾玉が、光沢を失い灰色に濁っていた。

「効力などあるのか」

龍神の加護など微塵も期待できない有り様に、目を疑う。

「粗末に扱ってはなりませぬぞ」

「ああ」

侍医は首の治療を終えると、救急箱を片付け「では夜半に」と告げ退室した。

入れ替わり部屋に入ってきた凛音は、赤い目をしたまま母上の言葉を伝えた。

「充分に身体を休め、闘神祭には万全の状態で臨むようにと仰せでした」

俺を見つめる顔が険しかった。

「そうか」

「両陛下は王子のお身体を大層心配なさっておいでです。龍神の力の影響が出ていないか、何度も念を押してお訊ねでした」

険しい顔のまま、声を震わせる。

「大事ないと答えたであろうな」
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