王子、月が綺麗ですね
──負けてたまるか

王子の心の叫びが聞こえてきそうだった。

「楽しみにしておこう」

王陛下は来た時と同様に颯爽と去って行かれた。

ピンと張り詰めた空気が王陛下の姿が見えなくなるまで続いた。

王子の顔色は緊張で強張っているのか、蝋人形のように白くなっていた。

「王子、試合の相手が祥でようごさいましたね。王陛下は互角と仰せでしたが、私の見立てでは王子の方に分があるかと」

梨花さまがにこやかに笑い、王子の肩に軽く触れた。

王子が「ああ……」と上の空で呟き、ギュッと両手で三節棍を握りしめた刹那、王子の両脚が激しく痙攣し始めた。

ガクガクと震え始めた王子の両脚は、腰から崩折れるように沈みんだ。

「王子!!」

駆け寄るわたしの声と支えようとする紅蓮殿の声が重なり、鍛錬に居合わせた騎士の方々の視線が一斉に、王子に注がれた。
< 38 / 177 >

この作品をシェア

pagetop