王子、月が綺麗ですね
松葉杖を着いた王子に慌てて、王子の足を確かめられた。

「階段、踏み外して筋を傷めて」

王子は白々しく嘘をついた。

「葵、ご苦労。良い試合だった」

王陛下が王子を労い、女王陛下に同意を求められるように言うと、女王陛下は王子を見上げ一瞬、戸惑った表情をされた。

直ぐに何事もなく「朔の後は鍛錬の時間もあまり取れなかったと聞いていましたが、良い試合を観せてもらいました」と微笑まれた。

王子は礼を述べて席に着き、闘技を食い入るように見つめられた。

貴族の代理で闘う闘技奴隷同士の対戦は、ほぼ互角でなかなか決着がつかない。

「貴族はずるいよな。財力にモノを言わせ、強い奴隷を雇って闘わせる。王女を実力で勝ち取るくらいの技量があっていいだろ。なあ、凛音」

「王子は手厳しいですね」

わたしが答えると、桔梗さまが闘技場から目を背け俯かれていた。
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