今夜、きみを迎えに行く。
昨日の晩、祖母のお見舞いから帰ってきてから作ったパウンドケーキは、ちゃんと綺麗にカットして包んでバッグの中に入っている。
トミーさんに作り方を教わって、成功するかドキドキしながら初めて焼いたケーキは、不自然な割れ目や膨らみかたで見た目には大成功とは言えない出来映えだ。
だけど、焼きたてを切って味見してみると意外にも、とても美味しかった。
下手くそだけど、これはあの日病院まで送ってくれたお礼。
学校からの帰り道、喫茶ブランカへの道を自転車でこぐ間にも、バッグから微かに香る甘い香りはわたしをほんの少しだけうきうきした気持ちにさせる。
いつもの川沿いの並木道を少し曲がって、大きなお屋敷の並ぶ通りを抜けると見えてくる、小さな屋根の小さな家。
わたしの大好きな場所。