今夜、きみを迎えに行く。
その日もわたしはいつもの通り、トミーさんがいつ出掛けても良いように、店の掃除をさっさと済ませ、コーヒーや日替わりスイーツの準備を始めていた。
コーヒーと、トミーさんお手製の日替わりスイーツをセットに出来るようにと提案したのは、他でもないわたし。
このところ、近所に新しい住宅が続々と出来始めたらしく、隠れ家的なこの喫茶店に目をつけたらしい若い奥さんが、ちょこちょことやって来るようになったのだ。
スイーツ好きな奥さんたちに、トミーさんお手製のシフォンケーキや田舎風クッキーはとても好評で、リピーターも多い。
忙しくなるほどではないけれど、以前より喫茶店らしくなったのは確かだ。
相変わらず店に看板はないけれど、そこがまた隠れ家的な雰囲気でいい、と言ってくれるお客さんもいるから、そのままにしている。
カトラリーをセットしたり、スイーツプレートの仕込みをしたりを手早く進めていくわたしの隣で、新しい楽譜を眺めながら、トミーさんが「あっ」と何かを思いだしたように呟いた。