今夜、きみを迎えに行く。
「さあリュウジ、とりあえず、どこでも好きな席に座るといい。打ち合わせは、うちのコーヒーを飲んでからだ」
トミーさんが、リュウジと呼ばれた彼に向かって手招きをする。
バンドのメンバーはテーブル席で楽譜を広げ、なんだかんだと好き勝手に話しながら、嬉しそうな顔で新メンバーのリュウジを見ている。
愛想のない顔で、こちらに向かって歩いて来るリュウジ。
肩に担いだギターケースをそっとおろし、カウンターの下に優しく置いた。
そして、彼はカウンターの左から三番目、わたしから見て斜め前のあの席に、そっと座った。
シュウがいつも座っていたあの席。
シュウとそっくりで、でも全然違う雰囲気の彼、リュウジは、わたしのことをじっと見詰め、不思議そうな顔をしてこう言った。
「…お前と俺、どっかで会ったことあったっけ?」