今夜、きみを迎えに行く。




「……葵……」




「……茜、あの、わたしね……」




聞いてはいけないものを聞いてしまった。そう思った。
なんと言えばいいのかわからなくて、茜から目をそらしてしまう。




「葵、はやく学校行こ!」




茜が自転車にまたがって言った。どうして、笑ってなんていられるんだろう。




「あ、…うん」




わたしも慌てて自転車に乗る。茜が自転車をこぎはじめる。わたしも茜を追いかける。

いつも見ていた、茜の後ろ姿。ひらひらと舞う、茜のスカート。白くて長くて、細い脚。



川沿いの、いつもの道にさしかかる。茜がそこにいるだけで、いつも通りに流れていく並木道、綺麗な景色。




「うちの両親、離婚するんだ」




隣に並んだ、茜がいった。風に煽られて、茜のおでこが全開になる。わたしのスカートも舞い上がる。




「ずっと前から、決まってたことなの。わたしが十八歳になって、高校を卒業したらって約束だった」




「ずっと前って…いつから…」




わたしは何にも知らなかった。気付きもしなかった。




「中学校を卒業する前くらいかな。最初の原因は、お父さんの浮気だったけど、それからどんな小さなことでも言い争うようになって、結局離婚。来年、高校を卒業したら、わたしはお母さんと家を出ていくって約束になってる」




茜の顔は、話の内容とは正反対に、清々しくて爽やかで、とてもなにかに悩んでいるようには見えなかった。

それが余計に、わたしを悲しい気持ちにさせた。




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