こっち向いて、ダーリン。【改訂版】

彼をひたすら想うわたし

結局晋が話したいことは、この学校の頭は誰かとか派閥はあるのかとか、はっきり言ってどうっでもいい話ばかりだった。


放課後、深瀬くんの所に行くつもりが今日はまっすぐ帰宅。

とてもじゃないけどこんな気持ちで深瀬くんに会うなんてできなかった。


「ただいま」

「お帰り。今日は随分早いのね」

「うん。お父さんは?」

「さすがにこんなに早くは帰って来ないわよ」

「そっか」


お母さんと軽く話し、すぐさま自分の部屋にこもる。

ドサッと鞄を下ろすと力が抜けベッドにダイブ。


心地よさに目を閉じる。


──そういえば最近、お父さん大人しいな。

大人しいって言い方も変だけど、お母さんに手を上げたりしない。怒鳴ったり機嫌を悪くしたりもしない。

わたしはいつも通り当たり障りなく接している。お父さんも当たり障りなく普通にしている。

これが世の中の一般的なお父さんの形なんだろうけど、うちのお父さんになると話は別。

相当珍しい。初めてに近いかもしれない。


いつまで続くんだか。平和なのは大歓迎ですがね。何かあったのかな。


──だがしかし、今はそれよりも深瀬くんだ。

フーッと大きく息を吐き、天井を仰ぐ。今日聞いた話を、頭の中で振り返させる。


…なんだか深瀬くんって太陽みたい。

太陽に近づきたくて、少し近づいただけじゃ足りなくて、もっともっとって近づくんだけど、近くなればなるほど熱くて自分が苦しくなる。

近づいた時は嬉しくてその苦しさに気づかない。気づいた時には翼は燃えて、地へ落ちていく。
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