完璧な彼は、溺愛ダーリン


「……あのね、私……好きな人がいるんだ」


望くんは頷く事もせずに黙ったまま私の話を聞いている。


「望くんの気持ち、凄く嬉しかった。ありがとう。でも、ごめんなさい」

「……その相手ってこないだの彼?」


じっと私の事を真正面から見つめた彼が、そう尋ねた。
少しだけ下がった眉。悲しそうに微笑んでいる望くんの顔を見て、ちくりと胸が痛んだ。


「うん、そう」


私がコクリと頷きながら答えると、すぐにははっと渇いた笑いが彼の口から漏れた。
それから、背もたれにべったりと背中をつけると天井を仰ぐ。


「だよなあ。勝ち目ねーって思っちゃった」

「そんな事ない。望くんだって凄く素敵だよ!」


必死に否定しようとするけど、

「それ、睦実ちゃんが言っても説得力ないからね」

と力のない声で言われてハッとして口を噤んだ。


本当に素敵だって思っているのに。
それでも、好きな相手が葛木さんだという事実は変わらない。

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