完璧な彼は、溺愛ダーリン

「少し肌寒いね。雨降ったのかな、地面濡れてる」


外に出るなりそう言った望くんは、「寒くない?」と尋ねて来る。
それに笑顔で首を振った。


「大丈夫。上着持ってきてるから」

「準備いいね」

「折りたたみ傘までは持ってきてなかったから、止んでてよかった」

「電車混んでるよね。ムシムシしてそうだなあ」


それを想像しているのか、望くんがしかめっ面をした。
確かに混んでそうだ。
私の帰る方面は特に。


望くんの最寄り駅はどこなの?と、尋ねようと思った時。


「三石さん!」


私を呼ぶ声がした。
その声に一瞬、心臓が止まったかと思った。


恐る恐る、声がした方に視線を向ける。


そこに立っていたのは、葛木さん――――と、栞だった。
< 99 / 189 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop