死神女子高生!
自称幽霊は流れるような柔らかい動作ですっと立ち上がって、こっくり頷く。

「そうですよ」
「でも、あなた幽霊なのに透けてないじゃ……あれ!?」

あたしは彼を凝視した。
男の向こう側には窓がある。
カーテンはまだ引いてないから、外の真っ暗な景色が四角くぽっかりと開いていて、そして。
それが、見える。彼が立っているから、遮られているはずなのに、見える。
男の着物の色、藤の花のような薄紫色がうっすら掛かってはいるが、はっきり見えているのだ。

「どうして……」
「信じていただけましたか?」
「で、でも、さっきはちゃんと実体があるように見えたんですけど?」

ああそのことなら、と幽霊は口許に手をやって目を伏せ、考えるような仕草をした。

「…後でお話します。ですが今は、あなたに頼みがあるのです」
「へ!?あたしに…?」
「はい」

彼は真剣な顔をしてまっすぐあたしの目を見た。
あたしはドキリとして目をそらせずにそのまま彼の瞳を見返す。
日本的な見目形だというのに、彼の瞳はどういうわけかきれいな若草色だった。

「死神さん、」と彼は言う。
あたしは死神じゃなくてただの人間です、と言い返すのも忘れて、ただただ若草色に魅き込まれていた。
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