結婚したくてなにが悪い?!
大田さんには謎が多すぎる。
態度のデカさや、話す内容からして、他からの転職組でない事は分かっていた。生田さんの同期と聞いて、系列ホテルからの移動かと思って、本社に居る同期に聞いてみたが、社員のデータベースには載ってないと言われた。
この人何者だろう…?
データベースに情報が無いにも関わらず、限られた人間しか持てない鍵を持てる。(私は小野キャプテンの代理で鍵を管理させて貰ってる。)
勤務時間が有るようで無い。…みたいな事も前に言ってたし?
ホント大田さんに関しては分からないことが多すぎる。
「大田さんって何者ですか?」
「はぁ?」
「だって色々怪しすぎます。…仕事だって不真面目だし…なにより、生田さんと同期なのが怪しいです!」
「なんだそれ?」
生田さんの年の採用者数は少なかったと聞いている。その中でもホテル部門は13人だけだったらしい。そのうえ研修も厳しく、あまりの厳しさに夜逃げする人もいたと噂がある。実際、生田さんからもホテル部門の同期は少ないと聞いたことがある。
「あの秀逸な人材の年と言われてる生田さんの同期だなんて…絶対ありえない!」
「俺スゲェー言われようだな? これでも昔は真面目だったけどな? まぁ今の俺見てたら仕方ないか? 趣味で仕事してるみたいなもんだからな?」と、大田さんは笑う。
でも、笑う大田さんの顔が寂しそうに見えて、私は運転席の彼の顔を見つめていた。
「…人は変わるんだよ? 良くも悪くも…よく知ってるだろ? あんたも…」
そして、近づいてくる彼を私は受け入れていた。
彼の唇が私のものに優しく触れ、次第に口内へ入ってきた彼の生暖かいものは音をたて、私の躰を火照らせ意識を朦朧とさせる。
キスをしていた時間はほんのわずかな時間だが、朦朧とする私にはとても長く感じた。
「でもそんなに俺の事が気になってたとはな?」と言って彼はニヤッと笑う。
「……きっ気になんてしてない!!」
ううん。
気にしてる。
気になって、気になって仕方がない。