強引部長の独占ジェラシー


「そういえば部長、あれから料理はしてますか?」

「いや、全くだな。俺は元からあまり料理はしないし、あの日食材が揃ってたのは本当にたまたまだ。残った野菜を消化するのが大変だったよ」


確かに、料理をする人ならすぐに野菜は消費出来るけど、しない人ならいつまでも冷蔵庫に残っているものだ。


「あ、でも味噌汁は自分で作ってみたぞ!」

「おお……!」

「初めてですか?」

「ああ、初だ」

「上手く出来ました?」

「いや、お前が作ってくれたものののようにはならなかったな」

私はくすっと笑って尋ねた。

「ふふっ、どうやって作ったんです?」

「具を入れて、味噌を入れて……そのままグツグツ〜っとな」


ああ、なるほど。
工程が違ったんだ。


「味噌を入れてから煮立たせると味が変わっちゃうんですよ」

「そうなのか?」

「はい」

知らなかった、と顔をしかめて言う部長が面白くて小さく笑うと、部長が不思議そうな顔をして私を見た。


「何がおかしい?」

「いや、部長にも不得意なことがあるんだなと思って……」

「当然だろう。俺は完璧ロボットではないぞ」


分かってはいるけど、私に出来て部長に出来ないことがあるのは、なんだか不思議な感じ……。

「お、見えて来たな」

そんなことを考えていると車はいくつかのトンネルを抜け、高層ビルが集まる中心部に止まった。

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