WHAT COLOR IS LOVE
けれど、君のナイフは偽物。
僕は君に殺されてあげることさえできないんだよ。
「アンタには、どうしても生きていてほしいのに……!?」
馬鹿な君。
どうしようもなく、無知な君。
たったひとつ、僕だけを守りたくて。
それでも、自分の膨らんでしまった気持ちを抱えきれずに。
僕にナイフを向けた君。
涙を流し続ける君。
限界かもしれない。
もう、君の涙までが、赤く、赤くなっている。
馬鹿な君。
どうしようもなく、愛しい君。
僕も君をどうしても守りたいけれど。
なんにもしてあげられなくて、ごめんね。
そして君はまた、何か言おうとして、やめた。
僕が言葉を知らないことに、気がついたんだね?
そうさ。
僕に言葉はどうしても届かない。
僕は、ナイフごと、涙ごと、赤い君を抱きしめた。
「知ってるんだ」
僕は、知っている言葉を、全て並べ始める。
「知ってるんだよ。僕は」
君を愛しているということは、つまり……。
「君のナイフが偽物だってことを」
抱きしめた君が愛しくて、僕も赤い涙を流しているような感覚になった。
目の前が真っ赤になった。
そうか。
君はもう、こんなに近くにいるんだね。
僕は目を閉じて、もう一度ゆっくりと言った。
「僕はずっと知ってたんだよ」
君の涙は、止まらない。
赤い涙は、止まらない。
「馬鹿な、アンタ。どうしようもなく、無知なアンタ…」
君は、僕と同じセリフを吐いた。
そして、幾度となく僕の頭を撫でて、左手の力を抜いた。
どうかな?
伝わったのかな?
僕の心の中が、少しは君に見えたかな?
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