守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~
***


「っで、話の続きだが……」


閉店を迎え片付けを終えた店に気まずい空気が漂っていた。

真剣な顔をする山瀬さんと不機嫌丸出しのチーフ。
そして2人の間で呆れ顔をする大将。

私は苦笑い気味に3人を見ていた。


「山瀬さん……さっきの言葉は本気だな?」

「……はい」


大将が確認を取る様に山瀬さんに問いかける。
聞かれるまでもない、と言ったように頷く彼を見て大将は頭を抱えた。

恐らくチーフと山瀬さんの間で悩んでいるのだろう。

でも、何でチーフは反対をするのだろうか……。

人手が増える事はいい事なのに。

そう思っていれば、チーフが山瀬さんを睨みつける様に口を開いた。


「この仕事はな……アンタが考えているほど容易いものじゃねぇんだよ!
コイツが好きだからとか、コイツと居たいからとか……。
そう言った中途半端な気持ちで気軽に始めて貰っても迷惑だ」


階段近くに立っていたチーフはそのまま体を翻して立ち去ろうとする。
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