守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~
「……そう固くなるな。何もしない」

「わ、わかってますよ……拓海先輩はそんな人じゃ無いですから」


ホテルの1室で行われるやりとり。
何も下心があって来たわけでは無い。

あの雨の中、外にいる訳にもいかず仕方なく雨宿りへと来ただけだ。
あんなにびしょ濡れでは何処かのお店にも入れないし……。

とりあえず、着替えようと買ってきた服が入った紙袋を掴んだ。


「……まあ、そこまで安心しきられても困るがな」

「えっ……」


音を立てながら落ちる紙袋。
その理由は唇に残る温もりだった。


「……花蓮……」

「な、何もしないって……」

「……好きな女と2人でいて……何もしないほど大人じゃないさ」

「……嘘つき」

「何とでもいえ」


ふん、と鼻を鳴らして笑う拓海先輩。
こんな状況なのに穏やかな空気が流れるのは……。
拓海先輩とだから……?
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