守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~
「とにかく移動するぞ。本当に風邪を引いたらしゃれにならない」

「……はい」


拓海先輩は私が頷くのを確認するとゆっくりと歩き出した。
背中が遠ざかるにつれて私の足が動かなくなる。

この背中をいつも見ていた。
1歩先を歩く先輩。
僅かな年の差なのに、やけに大人びていた拓海先輩に追いつこうと必死だった。

大好きだから隣にいたかった。
でも、あの頃から……。
少し無理をしていたのかもしれない。


「花蓮……?」

「……」

「……行くぞ」

「……あっ……」


掴まれた手。
骨張った大きな手はきつく私の手を包み込んだ。

あの頃と変わっていない。
私たちの距離。
掌の大きさも、身長差も。


「照れてるのか?」

「そ、そんなこと……!」

「顔真っ赤だけど」

「……もう」


真っ暗な公園。
しかも大雨の中、小競り合いを行う男女。
何処からどう見ても幸せなカップルに見えるだろう。
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