守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~
「無茶しすぎだ。そんなに泣くなら何であんな嘘を吐いた?」


低い大将の声。
その言葉が表すように小さな泣き声が聞こえてくる。


「ああでもしないと……アイツは前に進めないでしょ?
お人好しな馬鹿なんだから」


嗚咽交じりに聞こえてくる声。
それがチーフの優しさを表しているようだった。


「だからってなー……お前が傷ついちゃ意味ないだろう?」

「いいんですよ、俺は。アイツが……海咲が笑ってくれれば」

「……本当に馬鹿な奴だな。お前は」

「煩いです」

「でも、まあ……これで海咲は大丈夫だろう。
嘘で辛い思いをしてきたアイツはお前の嘘で助けられた。
……もう、過去を思い出して苦しむことも無くなる」


大将とチーフのやりとりを聞きながら小さく頷いた。

もう、大丈夫。
そう想いを込めて。

いつだって支えてきてくれた2人。
そんな2人に顔向けできるようにケリを付けてこよう。


「……行ってきます」


呟いたと同時に走り出した。
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