守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~
「ミサキさんが……かわ……かわ……」

「おー海咲? 何してんだ?」


山瀬さんが何かを言おうとした時、遠くから聞き慣れた声が聞こえてくる。
そっちを向けば軽く手を上げたチーフがいた。


「チーフ! 今まで出てたんですか?」

「ああ、ってお前仕事は?」


チーフは驚いた様に私を見ていた。

それもそうだろう。
閉店時間は過ぎてはいたが、いつもなら片付けをしている時間だもの。


「……ちょっと……」

「はあ?」

「まあいいじゃないですか!」


あはは、と笑えば隣から視線を感じた。
そこには山瀬さんがいる。
でも私が視線を向ければ慌てた様に逸らしてしまう。


「山瀬さんじゃないですか」

「こ、こんばんは」


チーフは漸く山瀬さんに気が付いたのか驚いた様に目を見開いた。


「ふーん、なるほど」


何を思ったのかチーフは不敵に笑って山瀬さんを見つめた。
< 53 / 297 >

この作品をシェア

pagetop