守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~
「おお、帰ったか」

「大将……」


店に入れば丁度片付けを終えた大将がこっちへと歩いて来る。
いつも通りの笑顔に胸が苦しくなった。

私のせいで大将に1人で仕事をさせてしまった。
しかも、個人的な理由で。社会人失格だ。


「大将! 今日はすみませ……」

「海咲」


謝ろうと頭を下げようとすれば大将が遮る様に口を開いた。
戸惑う私を見て大将は豪快に笑った。


「俺はな……お前の寿司を握ってる時の顔……結構好きだぞ」

「え……」

「だから、しけた面して握るな。いつも通り楽しくやれ」

「……はい」


大将の優しさがダイレクトに胸に伝わってくる。
泣きそうになるけど、唇を引き上げて笑顔を作った。
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