俺様社長の溺愛宣言
「…私は、渡辺満里奈と、一馬の父親で、渡辺謙二といいます。この度は、一馬の無礼深くお詫び致します」

謙二の言葉に、当然零士は驚きを隠せなかった。

今まで一度も満里奈の父親の顔を見たことも、姿を見たことすらなかったのだ。

それが、ここにきて、突然現れたのだから、驚くのも無理はない。

「…あの、頭をあげてください…満里奈は何処にいるんですか?小林先生に言われてきたのですが」

「…満里奈は今、一馬に付き添っています」
「…え?!どういうことですか?」

…謙二は渋い顔をしながら、これまでの経緯を零士に話した。

零士は驚きはしたが、満里奈の無事を知り、安堵した。

「…満里奈の具合が悪くなったのじゃなくて良かったです」

「…心配をお掛けしてすみません」
「…いいえ」

「…御崎さん、一馬の事なんですが」
「…はい」

「…今後、こんなことがないよう、一馬をアメリカに行かせます」

「…」

「…一度は、満里奈と一馬の結婚を認めましたが、貴方と満里奈の事を知り、一馬の説得を続けてきたのですが、ここまで一馬が満里奈に執着していたとは…父親として、一馬と満里奈の幸せを考えて出した答えです。親バカですが、満里奈を貴方にお任せしてもいいでしょうか?」

「…勿論です。満里奈と生涯共に暮らせるなら、この上ない幸せです…ですが、一馬さんは、納得するでしょうか?」

「…今は、納得しないでしょう…ですから、満里奈から離れる時間を作った方がいい。向こうで一馬は医師として、目まぐるしい時間を過ごせば、満里奈への想いも、いつか思い出に代えることが出来る筈です…そうだな一馬?そんなところに立ってないで、入ってきなさい」

…謙二の言葉に、ドアが静かに開いた。
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