俺様社長の溺愛宣言
「…何とか阻止しなければ」

そう呟いて、ノロノロと準備するフリをする満里奈。

その間、零士は満里奈の淹れたコーヒーを飲んでいた。

…5分…10分…15分…終いには30分。

そろそろ怒られるかなと、ビクビクしながらソファーを見ると。

「…寝てる」

…実は、全くもって準備などしていない満里奈は、いつの間にか取り込んだ布団を枕に、気持ち良さそうに眠る零士を見つけ、肩を撫で下ろす。

寝ているのを起こすのは可哀想だと思った満里奈は、ハーフケットを被せ、直ぐ近くにしゃがみこみ、零士の寝顔を見つめる。

長い前髪が目にかかっているので、そっと撫で上げる。

…寝ていれば、傍にいられるし、こうやって触れることにも抵抗はないのに。

そう思うと、何だか可笑しくなった。

…。

それからどれくらい時間が経ったのか?

辺りはすっかり暗くなっていて、零士はガバッと起き上がった。

「…起きましたか?」
「…いつの間にか寝てた、な」

頭をくしゃっとした零士を見て、満里奈は微笑む。

会社では絶対見られないであろう素の零士がなんだかとても近くに感じられて、嬉しくなったのだ。

「…お仕事大変だから、疲れてたんですね」
「…あぁ」

満里奈の言葉に、頷いた零士は思う。

…いつぶりだろうか。こんなにぐっすり眠ったのは?もう何年も、睡眠時間なんて、あってないようなものだったから。

「…お腹すきませんか?簡単なものですが、よかったら」

満里奈の言葉に、頷いた。
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