俺様社長の溺愛宣言
「…わかった、もういい、下がれ」

俺の言葉に一礼した課長はドアに向かって歩き出す。俺は、書類に手を伸ばし、それを見た。

「…社長」
「…なんだ?」

課長の方は見ずに答える。

「…たかが一社員である渡辺に執着する理由を教えて下さい」

その言葉に驚いて、課長を見やると、課長は真っ直ぐに俺を見据えていた。

「…渡辺満里奈を愛してる。俺は、渡辺満里奈が欲しい」

俺の答えを聞き、課長は小さく溜め息をついた。

「…社長、あの掲示板に張られていた写真はどう説明しますか?」

「…渡辺じゃないもう一枚の写真は、身に覚えのないこと。でっち上げだ」

「…そうですか。それを聞いて、安心しました。…渡辺満里奈ですが、今週一杯は仕事は休みます」

「…そんなに体調が良くないのか?」

「…彼女は生まれつきの持病を持っています。入社してからも、時々体調を崩しています。今回は、私が思うにあの写真のせいで、心労が重なったのでしょう。渡辺を手に入れたいなら、彼女の全てを受け入れる覚悟を決めてください。彼女は私にとって、かわいい部下ですから、幸せになってもらいたいんです」


「…持病って一体?」
「…それは、渡辺本人から聞いた方がいいかもしれませんね。私はこれで失礼します」

…課長は出ていった。

「…重い病気なのか?…満里奈」

携帯を手に取り、満里奈の番号を出す。

…でも、かけられなかった。

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