俺様社長の溺愛宣言
仕事復帰した満里奈を、総務課のみんなは歓迎してくれた。

休んでる間に、病気の事を課長から知らされた二人は、満里奈をとても気遣った。

満里奈は、甘えてはいけないと思いつつも、大きく出来た傷は、思いの外、引きつれて少し痛む時もある。

だから、悪いと思いつつも、甘えることにした。

「…御崎社長」
「…?!」

廊下を書類を持ち歩いてる満里奈に、零士を呼ぶ声が聞こえ、振り返った。

…久しぶりに見かける、零士の後ろ姿。

話すこともままならない。会社で顔を合わせることすら出来ない。

満里奈、胸に手をあてた。

こんなに直ぐ傍にいるのに、顔すら見ることが出来ないなんて。

声をかけるなんてもっての他だ。

『社長』と、『平社員』

今までは、零士から声をかけてくれていた。だから、会うことも、話すことも出来ていたけれど、今はもう、自分に気づきもしない。

「…零士さん」

名前を呼んだだけで、涙が出そうになる。零士が恋しくなる。

満里奈は、目尻を拭い、書類を抱え直し、目的のオフィスへと歩き出した。

…。

「…満里奈?」
「…社長、どうされましたか?」

中島と話をしていた零士は、ハッとしたかのように、満里奈の名を呼んだ。

突然満里奈の名を呼んだので、中島は驚いて零士を見る。

「…悪い。満里奈に呼ばれたような気がして」

そう言いながら、辺りをキョロキョロしたが、既に満里奈は居なくなっていた。

「…いませんね」
「…気のせいだな。満里奈はまだ、向こうにいるはずなのに」


…そうなのだ。

帰国したら、一番に、一馬から連絡が来る筈だった。

それなのに、一馬から連絡はない。

一馬と交わした約束とは。
< 99 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop