俺様社長の溺愛宣言
9.俺様社長の傍へは帰らない?
…それから、一ヶ月後。

満里奈は無事に退院し、日本へ帰国することになった。

勿論、一馬も共に。

「…もう、仕事に復帰するのか?まだ、復帰するのは、早い気がするが」

一馬は身支度する満里奈に問いかける。

「…二ヶ月も仕事を休んでしまったから。庶務課の人達に迷惑これ以上かけられないよ。それに、手術費用だって、返さなくちゃいけないし」

「…費用の事は、気にしなくていいって言っただろ?返す必要はないんだ」

「…お兄ちゃん、心配してくれるのは嬉しいけど、もう、体の調子はいいし、無理はしないようにする。残業もしないようにするから、ね?助けてもらった大事な命だから…
そうそう、指輪ね、大事にネックレスにつけてるの、ほら」

そう言って微笑む満里奈を見て、一馬は複雑な気持ちになる。

その指輪の送り主は自分じゃないのに、満里奈に言えないでいた。

言ってしまえば、満里奈が零士の元に行ってしまうことは分かりきっていた。

…零士との約束も守られていない。

零士は一馬との約束を完璧に守っていると言うのに。

「…満里奈、会社には行くな」
「…お兄ちゃん、どうしたの?」

不思議がる満里奈に、一馬はもう、駄々をこねるのをやめた。

「…気をつけて行ってこいよ」
「…うん、お兄ちゃんは今日は夜勤なんでしょ?帰って早々大変だろうけど、頑張って」

何の疑いもなくそう言う満里奈の頭を一馬は優しく撫でた。
< 98 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop