悠久のシャングリラ

もう一つの真実



♡other side♡

「いい機会だから、見せてあげるよ。
彼女がどう過ごしてきたのか。
何も無い世界で何を感じていたのかーー」


クイナが声を発したことにより、
神秘に見せられていた誰もが、
現実へと戻ってきた。

そしてその言葉を理解する同時に、
彼らは少しの汗を滲ませる。

それはやはり、
【過去】を知ったからなのだろうか。

クイナは、花の蕾のケースの中から
咲夢梨をそっと抱き上げた。

小さな二人はその一挙一動を見ているものの、止めに入るつもりはないらしい。

抱き上げる丁寧な動作に、
少なからず彼女を大切に思っているであろうことが伝わってきた。


「さあ、きみたちの知らない……
もう一つの【真実】を知るときだよ」


その声色から、
恐怖が湧き上がることはない。


むしろその逆ーー、
真実を知らなければという気持ちにさせる。

< 238 / 306 >

この作品をシェア

pagetop