悠久のシャングリラ

死よりも辛いこと



……やっと完成する。

長年の悲願を経て、
創成された世界がそこにあった。


ーーしかし。


「………」


私は既に、
もの言わぬ人形と成り果てていた。

暴れることもなく、ただ静かに。

呼吸をくる返すだけの、
生きているのか怪しい存在。

思い出した記憶も、
元から持っていた記憶も。

砂時計の砂のように、
この手からこぼれ落ちていった。

なんのためにここまで来たのか。

もはやその【理由】さえわからない。

けれど【願い】は忘れていない。
この胸にしっかりと焼き付いていた。

それでもたまに、霞に攫われそうになる。

< 253 / 306 >

この作品をシェア

pagetop