春風駘蕩
「あの、巽?」
感情が読めない表情で、巽は私を見つめ続ける。
吐息が重なりそうなほどの近すぎる距離に、私の鼓動はどんどん速くなる。
すると、巽は私の手からパンケーキを取り上げると、背後のシンクの上に置いた。
「あ、あれ……それ、レンジで温めようかと」
「わかってる。生クリームもブルーベリーも頼むし、とりあえず2枚」
穏やかな口調で巽はそう言うと、私の腰に手を回し、抱き寄せた。
目の前には巽によく似合っているカーキ色のセーター。
去年のクリスマスに私がプレゼントしたものだ。
「巽、あの、パンケーキ……」
私を抱き寄せたまま離そうとしない巽にそう言っても、巽はそれを無視し、両手で私の頬を挟む。
近づく巽の顔を見ながら、私は反射的に目を閉じた。
そして、自分からも顔を近づけ巽の唇を感じる。
社会人となり、巽と再会してからずっと、こうしてキスを交わし体を重ねているというのに、何度触れ合っても照れくさい。
巽への恋心は、高校生の時のままだ。