呪蟲
しかも何やら、赤い色をした蝿だ。

何か病気でも持っているのか?

法医昆虫学者ならわかるかもな。

滝沢は死体から離れ、周りを調べている数人の鑑識にその場を任せた。

「おい、佐川」

現場近くで携帯電話片手に電話している新人の刑事に歩み寄る。

しかし、佐川と呼ばれた若い男は、滝沢に背を向けているせいか、返事に応じない。

滝沢は舌打ちをし、白髪混じりの坊主頭を撫でながら、声を荒げた。

「佐川! 返事せんかい!」

「あ、あ、すみません、」

佐川真はおどおどしながら振り向き、携帯を下ろす。

全く頼りない顔をしている。

まるで生まれたてのヒヨコ面だ。

そのわりには、格好つけやがって。

黒髪を肩まで垂らし、鼻高の若い男−−佐川は、弱々しそうに視線を落とす。

「すみません、電話で聞こえなくて・・・・・・」

「わかったわかった、それで第一発見者のじじいは?」

「えっと、そのですね」

佐川は質問の意味がわからなかったのか、口ごもる。

そんな佐川に滝沢はいらいらし、佐川の頭を掻き回す。

「ああっ! オメーはとりぃんだよ。だからいつも馬鹿にされんだよ」
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