呪蟲
「こらっ! はーやーみーず! 今は何の時間かな?」

白衣を着た二十代半ばの教師が視界の中に飛び込んできた。

わざわざ視界に入ってくるとは、全く。

守は頬杖を外し、顔を覗き込んで偽笑いを浮かべている教師に述べた。

「もちろん蝸牛の人間に対する害についてですよ。

髄膜炎感染は蝸牛などの粘液が付着したレタスなど食べたりすると起こるとされます。

症状として脳に寄生虫が現れ、先程楠田先生が述べたように脳が肥大化し−−」

「わかったわかった、もういいわ」

楠田と呼ばれた女教師は、呆れながら教壇に戻っていく。

「速水君が言ったようにこの髄膜炎感染は非常に恐ろしく−−」

楠田がいなくなると、守はまた窓側の方を向いたが、もう視線は感じなかった。

椎野美咲はこちらには目も暮れず、熱心にノートを取っている。

外見もそうだが、ああいう真面目な所も好きだ。

ただ、美咲は彼氏いそうな気がするが−−。

ふと制服のズボンのポケットから振動を感じる。

守が着る制服は学ランという類で真っ黒い制服だ。

女子のはそれとは違い、赤いスカートに紺色のブレザー。
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