千日紅の咲く庭で
ありがとう、岳。


素直な言葉を伝えようとしていたのに。

「…俺達、幼馴染だろ?」

私の言葉を遮るよう、岳はにっこりと笑った。
「じゃ、おやすみ」

私が返事をする隙なんて与えないとでもいうように、岳はパワーウインドウをそそくさと閉めて、もと来た道を帰っていった。


私は岳の車を呆然と見送ることしかできなかった。


私と岳は幼馴染。
確かにそうだ。それ以外に私たちの関係を示すものなんてないのだから。


だけど。

だけど、岳の言い放った幼馴染という言葉に、心の底から傷ついている私がいた。


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