千日紅の咲く庭で
美知おばさんや友達に、気分転換にと散歩や買い物に誘われたのだけれどなんだかそんな気分にもなれず、断った。それにいろいろな手続きで外出しなければならない用事の時以外は、外気を浴びる気分にすらなれず、家の中に閉じこもってお母さんの遺影や特に興味もないテレビ番組をぼんやりと眺めた。


「花梨、いい加減に日光あたらねえとモヤシになるぞ」


私がぼんやりと過ごしていると、岳は毎日のように我が家にやってきて、我が物顔でリビングのテーブルの上にパソコンと書類を広げて仕事しているようだった。

時々、私を視界にとらえてはいつもの調子で、こうやって意地悪と言う。

久しぶりに会った日に岳に言われたように、岳はパソコン一台で、時々携帯電話で電話しながら仕事をこなしている。時々事務所に出社しているとは言っていたけれど、この数日は出社している様子も見られない。


もしかしたら、私が外出している間に出社しているのかもしれないけれど、私が家に居る時には必ずと言っていい程、岳も我が家のリビングで生活していた。

だから、家に若干引きこもっている私は、一日のほとんど岳と一緒に居るようなものだ。

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