千日紅の咲く庭で
お母さんと一緒にやりたいことだってたくさんあった。

聞いてほしいことだって、教えて欲しいことだって、もっとたくさんあったのだ。


親孝行だって、見せたいことだって、もっとたくさんあったのだ。



岳に素直な気持ちを言っていたら、熱いものが頬を伝ってきたのが分かった。

一度溢れ出てしまった涙が、堰を切ったように流れ出す。
ポロポロポロと、しばらくは止まりそうにない。


その時、急に岳に引き寄せられたと思ったら、岳に抱きしめられた。


岳の腕が私の背中にまわり、岳の暖かな体温と匂いに包まれた。

岳の胸に私の耳があたり、岳の鼓動と体温が伝わってくる。


岳は何も言わずにただ、私を包むようにして優しく抱きしめた。
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