千日紅の咲く庭で

「…ちゃん、花梨ちゃん。」

「えっ!?」

ぼんやりとしていて、後ろから声を掛けられたことに気付かないでいた。



「花梨ちゃん、着替えていらっしゃい。私はここ片付けておくから」

「美知おばさん…」

年相応に丸みを帯びた体型に喪服の上から割烹着を着た美知おばさんが、人懐っこい笑顔で声を掛けてくれる。


美知おばさんは、酒屋の奥さん。職業は、看護師と言っていた気がする。

「スーパーがあるせいで、郷原酒店はお父さんだけで十分よ」なんて、恨み節にも聞こえなくはない言葉をあっけらかんと明るく言っていたのを、聞いていた記憶が残っている。



私のお母さんとは親友と呼びあう程仲が良くて、お母さんの話にはいつも美知おばさんの話が盛りだくさんだった。