One letter

卒業式

卒業式。
3年は短かったなぁ。
新しく始めた部活。新しい教科。そして、新しい友達。
私は友達が沢山いる。何よりの自慢。何よりの誇り。
友達に格付けとか、そんなのはしないけど1番はじめに仲良くなって3年間クラスが同じで部活も同じ。話の波長もこれでもかっていうほど合う特に仲良い友達が1人いる。

親友の紡。

紡とは中学校の入学式の日苗字が私が泉原、紡が上野で席が前後だったことがきっかけで話していたら意気投合してそれから仲良くなった。
入学式の次の日には2人で遊びに行ってしまうほど。
いつも2人してバカばっかりやって、みんなに笑われてたなぁ…。
でもみんなが笑ってくれるのも嬉しかったんだよなぁ…。
これから離れ離れになっちゃうのかぁ。寂しいなぁ。

そんなことを思いながら卒業式が終わってみんなが帰ったあと静まり返った校舎を歩いていると、ちょうど私が使っていたロッカーの前で足になにか当たったことに気づいた。
「ん?なんだろ…?」
見てみると4つ折りになっている紙だった。
いつもだったらなんでこんなとこに落とすんだ〜!って思ってスルーしてしまうと思う。
でもなんだか拾わなきゃいけないような気がした。なんでかわからないけど。
最後くらい学校綺麗にしろ〜!って神様が言ってるのかな?
な〜んて、ガラにもないこと思ってみる。
拾って広げてみると何か書いていた。

「『この手紙を拾ってくれた方へ』…?」

文脈からしてそれは1通の手紙のようだった。
…それにしてもこの字、すごく見覚えがある。
あっ、紡の字にすごく似てる。いや、紡のものだ。
「紡のバカ。最後に何やってんだ〜(笑)」
誰もいないと思って安心しきってたのもあるけれど、普通に思ったことが口に出てしまっていた。
まぁ紡のことだからきっとくだらない冗談でも書いてるのかと思いながらも手紙を読もうと思い、目線を手紙の文へと落とした。

「この手紙を拾ってくれた方へ
私は癌です。」

まだ続きはあったけど、このたった2つの文を見ただけで読むのをやめてしまいそうになる。
たったの2文だけれど私にはとても重いものに感じられた。
「は、はははっ!ま〜た紡の得意の冗談だよね!!」
そうは言ってもどこか本当なんじゃないんだろうかと思う自分がいたが、信じたくなかったからか、そう思う自分がいた。


あれからどれくらい時間が経ったんだろう。
気づいたらいつも紡と2人で帰り道に寄って沢山色んな話をした公園に来ていつも座っていたベンチに座っていた。
1人で来たのは初めてだった。
どうやってここまで来たのか、全然覚えていない。
もしかしたらこのベンチに座ったまま眠ってしまっていてあの手紙は夢だったんじゃないかって思ってポケットやカバンの中を漁るようにしてあの手紙を探した。
...なかった。なかった!!やっぱりあの手紙は最初からなかったんだ!!夢だったんだ!
よかった〜。紡が癌なんかになるわけないんだ!

安心しきったところで帰ろうと思ってベンチから立ち上がるとカサっという音がした。
「なんだろ。」
なんか落としたかなぁと思って周りを見ると4つ折りでくしゃくしゃになっている紙が落ちていた。



ユメジャナカッタ



嫌な予感がした。
もう拾いたくなくて、拾いたくなくて仕方がなかったけれど、やっぱり拾わなきゃいけない気がして。
本当になんでかわからない。
ただ拾わなきゃあとから絶対後悔するし、紡を裏切るような気になってしまって拾わずにはいられず、拾って広げてしまった。
続きを読んでみるとこう書いて合った。

「この手紙を拾ってくれた方へ
私は癌です。突然こんなこと言われても気持ち悪いと思って捨ててしまう人もいるかもしれません。それでも構いません。ただ、気まぐれで書いてみただけなんです。私の気まぐれに付き合わせてごめんなさい。でも、この話を信じてくれて、手紙を読み進めてくれた方は本当にありがとうございます。私を信じてくれてありがとうございました。」

なんだろう。紡の思いがわからない。
紡は何を思いながらこれを書いたんだろう。
紡がわからないと思うのと同時に紡に対して計り知れないほどの怒り、という感情がこみ上げてきた。
どうして私に言ってくれなかったの。どうして。どうしてなの。
親友じゃなかったの私たち。それとも親友と思ってたのは私だけなの?

そう思うと私は無意識のうちに手紙を片手に走り出していた。
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