隠されたfact
「どうかされたのですか?いつもより早い起床なようで。」
と驚いた様子もなく言った。

「いや、なんでもない。ただ昔の夢を見ていただけだ。」
と、悲しげに絵画の中にいる女の人を見つめながら
リーディアは言った。

「…ラナ様にございますか?」
と静かに執事のシンが握りこぶしを作りながら聞いた。

ラナというのはリーディアの婚約者だった。
リーディアが12歳のとき、公爵だったラナの家、フラディンテ家が何者かによって潰された。家は残骸をも残されず、事件後の家の敷地は更地だった。ラナの父、母、そしてラナは跡形もなく殺されたのか、それともどこか遠い別の国に売られたのか分からない。
その出来事からはや6年。
もちろん潰されたのが公爵だったので、普通の調査よりはるかに細かくやった。
それでもなにも証拠となるものは見つからなかった。
犯人は何も残さず、去っていったというのだ。
その完璧な完全犯罪故、犯人がこの世に存在するのか、これは神々の悪戯ではないのだろうか、などと言われている。


< 8 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop