花よ、気高く咲き誇れ

ヒールとスニーカー




 水谷君が私をすり抜けて、走っていく。


 すっと風が私の髪をさらう。


 これで終わり。



「自分のことを嫌いにならないで済んで良かった」



 ぼそりと呟くと、涙が溢れてくる。


 ぼろぼろと、とめどなく。


 今日は目の水道が盛大に崩壊している。












 そうさ、私は武士だ。


 今日だけ、私は武士だ。


 武士に二言はなし。


 負け戦だろうが何だろうが、最後まで正々堂々戦ったのだ。


 それで討たれて朽ち果てても後悔なんてない。


 万全臨戦態勢、装備も完璧で挑んだが、ズタボロだ。


 こんな高いヒールは歩きにくい。


 走れやしないし。


 こんなタイトスカートじゃ、足も開かない駆け出せやしない。


 現代の女の戦闘服だ。


 やってられるか、バカ野郎!!


 自宅の前の公園で私はブランコを勢い良く漕いで、ヒールを遠くまでぶっ飛ばす。


 ヒールともおさらば。


 水谷君ともおさらば。


 何とも清々しい!!


 この風を切るような感覚と同じく、何と爽快なんだろう!!


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