花よ、気高く咲き誇れ




 水谷君と出会って、中身も外見も変わった。


 履きなれないヒールもスカートも。


 シャンプーやブロウに時間がかかる髪も。


 無駄に高くて、わけのわかんない香りの化粧水や乳液も。


 細かい作業に雄たけびを上げそうになるメイクも。


 自炊できなくても死にやしないのに、料理をしていたことも。


 全ておさらばだ!!


 なんと、今日は素敵な日なのだろう!!


 何もかも前の私に戻れるのだ!!


 あまりに素晴らしい日に喜びの涙が止まらない。















 ドン!!


 いきなり頭に重しが乗っかる。


 背後に人がいることさえ気付かなかった私は、驚きのあまりブランコから落ちた。


 頭に乗せられたものの正体は箱。


 その箱を乗せた者の正体は……













「……お前、本当にバカなやつ」



 尻もちを付いた私を、箱を脇に抱え、隆弘は呆れた目で見降ろしていた。



「な、な、な、なんで、隆弘!?あんた、ストーカー!?怖いんですけど!!」



 泣き疲れて、もやがかかった頭で驚きが冷めやらず、声がどもった。


 さっき叫んだせいか、泣き過ぎたせいか、発した声が私の声ではないようだ。



「はぁ!?俺の家の前に不気味な奴がいるから来ただけだ!!お前こそ、ストーカーだ!!」



「私の家の前でもあるし!!公園だし!!」



 意味不明な応酬が懐かしい。


 隆弘と話すなんて何か月ぶりだろうか。


 それは水谷君と付き合った日と同じだから、すぐにわかる。


 わかるけど、思い出したくないから思考を打ち切った。



「……わかっただろ。お前がバカだってことが」



「……全然!!私のどこがバカなのよ!!言ってみなさいよ!!」




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