花よ、気高く咲き誇れ




 水谷君は呆然とした顔を歪めた。


 それは今にでも泣き出しそうな顔で、私はぎょっとして手を止めてしまうが、それも一瞬で身体が固まる。


 私の肩に額を預ける水谷君に。



「……ずっと前に。蓮井さんと同じく頭を撫でくれた人がいたんだ。頑張ってる、って。誰よりも努力してる、そう言ってくれて。それに俺は救われて……。だから頑張ってた。褒めて欲しくて頑張ってた」



「み、水谷君……?」



「ありがとう。蓮井さん。本当にありがとう。蓮井さんはやっぱり人の機微に敏い。すごい人だ」



「………………」



 告白するつもりなんてなかった。


 だって、水谷君は確実に私の隆弘に対する行為を怒っていた。


 追いかけたのは弁明のためではない。


 でも、このままにはしておけなかった。


 だから、追いかけた。


 今、言った言葉はとっさではあったけど嘘ではない。


 思ったままを言った。


 次に会った時に気まずさが残らないように追いかけただけなのに。


 そんな顔されたら。


 そうやって涼しげに本当の笑みを私に向けられたら、私は…………。



「私は水谷君が好き。あなたが自分を嫌いでもあなたが好き。絶対に後悔させない。だから……」



 湧きあがって来る感情に頭が言葉が追いつかない。


 どうしようもなく私の心をかき乱す。


 最期がどうしても言えなくて、感情が高ぶって涙が零れそうになった。


 ああ、本当に私は恋する女の子になってしまったのだ。












「蓮井さん。俺と付き合ってくれませんか?あなたにふさわしくはないけどふさわしくなりたいと思う。だから、俺と」



 付き合ってくれませんか?その言葉と同時に私の目からは涙が零れ落ちた。






< 52 / 105 >

この作品をシェア

pagetop