花よ、気高く咲き誇れ





「そういえば、水谷君って、自炊してるの?」



 一人暮らしの男なんて散らかり放題の部屋とコンビニ弁当のイメージだが。


 まぁ、水谷君がごみにまみれてカップ麺をすすってる姿は想像できないけど。



「大したもの作れなくてさ。いつも、カレーばっかり。学食でまともなもの食べてる感じだよ」



「それなら、私が作るよ!」



「え?」



 水谷君の驚いた表情に、しまった、と慌てて訂正した。



「え、えっと、お弁当とか作ってくるよ。別に、水谷君のアパートに行きたいとかそういうわけじゃ……」



 本当は行きたい。


 見てみたい。


 そこで、手料理を振る舞いたい。


 だが、お付き合い初日で調子に乗り過ぎた。


 しかし、水谷君の驚きはそこではなかった。



「いや、そうじゃなくて。蓮井さんって料理できるの?」



「……隆弘が何か言ったの?」



 じろりと睨むと、水谷君が困ったように頭を掻いた。



「いや、そうじゃなくて。俺の蓮井さんに対するイメージかな?料理とかしそうもないから」



「水谷君!!それ、失礼!!私だって、料理くらいしたことがあるし!調理実習で!!」



「調理実習で?それはそうだね。で、大惨事を起こしたタイプでしょ?」



 くすくす笑う水谷君に私は顔を赤くして怒鳴った、もちろん図星で。



「失礼ね!!作れるわよっ!!見てなさい!!水谷君は私に謝ることになるわ!!」



 そう啖呵を切ると、水谷君はやっぱり笑ったまま、明日を楽しみにしているよ、と言った。


 そう。


 明日も明後日も、約束さえすれば会えるのだ。


 こうして、たわいもない話をして、くだらないことで二人で笑いあえるのだ。




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