花よ、気高く咲き誇れ




「……蓮井さんはスゴいね。人の機微に敏い。俺もそうだったら、もう少しマシな人間になれたのかも」



 水谷君の笑みはいつも爽やかだ。


 すーっと心に溶け込むような笑み。


 でも、その笑顔には心から笑ってはいない、控えめな笑みで、だからこそ爽やかで。


 とにかく、良くわからないけど、この人は心から笑う笑みを持たない人ではいかと思った。


 爽やかに流れる笑みしか持たないのではないか、と。



「良くわからないけど。馬鹿隆弘より随分マシよ。二人が同じ高校に通っていたなんて、ゴリラと人間が同じ学校に通っているのと同意義」










「……ハナ。そのゴリラって言うのは俺のことか?」



「い、いっだぁ~いぃぃ!」


 首根っこを後ろから掴まれ雄たけびを上げる私に、隆弘は野生的というかゴリラ的引きつり笑いをしていて、二人きりの逢瀬が終了したのだ。



「俺の悪口を大声で良くも言えたもんだな。ゴリラ?それならお前はオラウータンだ」



「……隆弘。あんた。なんでここにいるのよ?私は水谷君と話しているの。邪魔しないで」



「あ?葵は俺の友人だ。てめぇが、立ち去れ」



「はぁ?水谷君はあんたの所有物じゃないでしょ!?というか、私たち友達になったし」



「はぁー!?てめぇ、葵を脅しただろ!?」



「……何か俺が立ち去ったほうが良いかな?」



 くすくすとこの間と同じように笑う水谷君。



 まさか!!と二人同時に言うと、水谷君はさらにおかしそうに笑うから、私と隆弘は目で水谷君を制した。



 幼馴染とは阿吽の呼吸が使える時も稀にあると言うことだ。





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