花よ、気高く咲き誇れ
それなのに、私は、おめでとう、の一言も言えずに、ただじっと息を殺した。
水谷君を何故か、怖く感じた。
何故なのかわからない。
それでも、私たち以外は幸せそうに笑っていた。
水谷君が口を開くまでは。
彼が爪が食い込むほどに拳を握って、必死に耐えて、でも何故か震えていて。
彼の感情が私にはわからない。
怒り?
悲しみ?
わかるのは決して、幸せな感情ではないこと。
喜ばしいことなはずなのに。
そんなことを考えていると、ごくりと唾を飲みこみながら慎重に口を開く姿が見えた。
「……どうして。お前だろ。夏希が仕事にやりがいを感じているって言ったのは……おかしいだろ。それじゃ、おかしいだろ……」
怒鳴ったわけでもない、押し殺した声だった。
でも、周りの空気と明らかに違う空気を纏う水谷君にみんなが気付く。
お兄さんたちから視線は水谷君へと。
すると、一瞬で幸せな空気は消えた。
それに答えたのは水谷兄ではなく、義姉だった。
「私が自分で決めたの」
ふわっとした義姉の言葉に、水谷君はかすれた声で呟く。