背中合わせ、そこから一歩。



奥さんの想いを盗み聞きしてからしばらくの間、
色々なことを言い訳に彼との連絡を絶って、しっかり考えた結果を今、彼に直接伝えた。


不倫でも彼とつながっていたい。

そんな考えは、小さなきっかけでこんなにも簡単に変わってしまうものだった。


「ごめん、嫁とはすぐにでも」

「違う。そうじゃないの。
あなた…部長には、"今ある幸せ"を知ってほしい。それは、絶対に私じゃない。
"今ある幸せ"を、もう一度考えてください。
私が尊敬する素敵な部長なら、すぐにその大切さに気づけるはずです。

また明日からただの部下としてお願いします、部長。」




私には、彼女のような幸せを築いていける自信はないから。

彼女の幸せを塗りつぶすようなことは、悪女になりきれなかった私にはできないから。


さようなら。


彼への想いは永遠にこの胸に閉じ込めて。





三歩

-fin-
< 30 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop