魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
普段通り涼しい顔で述べた蓮様が、咀嚼もそこそこに、少しだけ眉根を寄せた。
やっぱりお口に合わなかったようだ。慌ててアイスティーを彼に手渡す。
しかし何を思ったのか、蓮様はもう一つサンドイッチを手に取った。
決して美味しかったわけではないと思う。その証拠に、味わうというよりかは、アイスティーで流し込んでいく作業のように見えた。
「蓮、そんなにお腹空いてたの?」
「普通」
椿様の問いに端的に答え、蓮様が黙々とサンドイッチを胃に収めていく。
もう気が気じゃない。悪いものは使っていないけれど、彼の肥えた舌に合うわけがないのだ。
「蓮様! あの、無理なさらないで下さい……すみません、お口に合いませんよね」
はらはらしながら、遠回しにストップをかける。彼は私を一瞥し、すぐに目を逸らした。
「君一人で食べ切れるの、この量」
「えっ」
「無理でしょ。張り切って五時から作るから、パーティーでもするのかと思った」
「どうして……」
五時から作っていたなんて、どうして蓮様が知っているのだろう。そんなことは彼に言っていないはずだ。というか、驚かせたくて言わなかったのに。
「どうしてもこうしても、うるさくて目が覚めた。僕の部屋まで聞こえてきてたし」