魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
鬱蒼とした視野がひらけ、草原が姿を現した。細く川が流れ、水面は夜空の星を映して穏やかに揺れている。
「森の中に、こんなに綺麗な場所があるんですね。ここが秘密基地ですか?」
すう、と肺の中に空気を深く取り込み、蓮様に問いかける。
「ここじゃなくて、こっち」
彼は言いつつ、手招きして私を呼んだ。暗いからだろうか、普段より親切な気がする――と言ったら、怒られるかもしれない。
案内に従って奥へ踏み入れば、大木が私たちを出迎えてくれた。立ち止まった蓮様に、少し戸惑ってしまう。
「あ、これ……」
違う、大木じゃない。いや、大木なのだけれど、正確に言うとそれがメインではなかった。
暗闇の中、よくよく目を凝らす。
木の幹を支えにして、階段が取り付けられているのだ。そして上には、可愛らしい小屋がある。
「どうしてこんなところに、ツリーハウスが……?」
思わず呟くと、蓮様が答えて下さった。
「両親が作ったんだ。僕と葵以外、誰もこの場所を知らない。言わなかった。だから、秘密基地」
「……私が知ってもよろしかったんですか?」