魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


嘘つき。
君は僕の傍にいたいって言った。だからそうしたいのに、君は絶対にそれを許さないじゃないか。

現に今だって、君は来ない。当然だ、だってこれは命令じゃないのだから。僕が自らその枷を外したのだから、あとは自由にすればいい。

与えるだけ与えて、尽くすだけ尽くして。散々夢を見せて、その後は連れ去ってくれないの。
随分自分勝手な魔法使いなんだね。それとも、本当に全部夢だったんだろうか。


「蓮様?」


突如聞こえた声に顔を上げる。自分の名前を呼んだのは、彼女の友人――確か、楓と呼ばれていたはずだ。


「あの、百合がどこにいるかご存じですか?」

「……君たちと一緒にここに来るんじゃないの?」

「え? いえ……蓮様と一緒に来るのかと思っていました」


お互いに顔を見合わせ、しばし沈黙する。

彼女にあんなことを言った手前、会場まで一緒に来るという空気にはならなかった。ただですら、今日に至るまでの間、彼女とのやり取りはぎくしゃくとしていたのだ。

そうして迎えた今日、特に何も言わず別々に行動していたものの、てっきり友人と約束をしているのだろうと思い込んでいた。僕には会わず、そのまま他の人と過ごすのだろうと。


「楓ちゃん」

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