魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


問おうとした刹那、蓮様が車のドアを開け、私を見据える。黙り込んでその様子を観察し――ようやく彼が私をエスコートしているのだと気が付いた。


「蓮様、いけません! 私はそのようなことをしていただく立場では……」

「君は執事じゃない」

「は……い?」

「今日は僕のパートナー、でしょ」


そんなに真剣な目で、顔で、訴えないで欲しい。錯覚しそうになる。自分が特別な存在なんじゃないか、と。
いいのかな。今だけは、少し夢を見ても許されるだろうか。


「では……お言葉に甘えて」


会釈をしてから乗り込み、シートに腰を下ろす。行き先の分からない車が、三人分の重みを伴って静かに動き出した。

十五分ほどのドライブの末、停車したのは一軒のお店の前。ショーウィンドウには赤や青、緑などのカラフルなドレスが並んでいる。


「『a Nake』……?」


店名を読み上げ、まさか、と息を呑んだ。
茜さんがなんてことないように頷いて、私を見やる。


「そう、僕の店。ここは女性用ドレスの専門店だけど」

「どうしてここに……」

「それは彼に聞いたらいいんじゃない?」

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